「female」感想

   

先日マスコミ試写会が行われた、初夏公開予定の映画「female」。
Jam Filmsシリーズ最新作『female フィーメイル』
(R-18指定)
~「女性」をテーマに描く、大人の女性のための魅惑のエンターテインメント~

試写を観た感想を改めて書いてみます。


以下、パンフレットからの抜粋。

人気女性作家の書き下ろし小説を、あの監督たちが映画化

第一線で活躍する女性作家5人が"女性"をテーマに書き下ろした作品を、気鋭の監督たちが5本の映画に仕上げた。2002年の『Jam Films』からスタートして『Jam Films2』『Jam Films S』と発展したコンピレーション・ムービー、『Jam Films』シリーズ。映画の新しい形を果敢に模索して喝采を浴びてきた同シリーズが、さらなる新機軸を開拓したのが、5作の女性映画からなる『フィーメイル」だ。

映画を観る前に原作の新潮文庫「female フィーメイル」(これ、映画化を前提に小説を書いてもらうという希有なケースです)を読んでいたのですが、最初は、正直、過去に全作家の作品を読んでいる身としては、何というか、これまでとの作風の違いというか違和感が結構ありまして、あの作家がこれを書いたの?という部分やら、ちょっとストーリー性が・・と思う部分やらが気になり、映像にした時にどうなるんだろうと思いました。でも、映画の原作として書き上げているという前提で再度読み直してみると、不思議としっくり来始めまして、小説単体の表現手法と映画化を前提にした表現とは異なるんだなぁと気づき、さすがプロだなぁと思った次第です。
よく、小説が映画化されてイメージが違うということがありますが、最初からそれを想定しているからか、割と振り幅が大きく取られている作品が多く、その分イメージのズレが少ないように感じました。
本作に関しては、映画をご覧になる前に、是非小説も読まれることをお薦めします。
今時、文庫とはいえ、この値段で5人の著名女性作家の競作が読めるなんてお買い得だと思います。劇場で買うパンフレットより安いですし(笑)。

「female」/新潮文庫 ¥380(税込)
さて、映画の感想ですが、まずは全体構成の説明から。
Jam Filmsシリーズ自体が様々な挑戦をしてきた映画ですが、この『female』ではさらにいくつかのチャレンジを試みています。テーマが「女性とエロス」という難しく深いものである点、原作を第一線の女性作家の書き下ろしにした点、ダンスエンターテインメントとの融合などです。
特に、ダンスに関しては、非常に面白い試みになってます。映像作品の前、中盤、最後に、まるでプレリュード、インタールード、フィナーレのようにダンス映像が織り込まれています。
演出・振付は、モーニング娘。などの振付で有名な「夏まゆみ氏」、音楽プロデュースはBoAやEXILEなどを手がける「今井了介氏」という豪華コラボレーションです。とにかく圧巻でエロティシズム全開のこのダンスシーンが、観客の気分を高揚させたり、切り替えさせたりと、非常にいい働きをしてます。
このダンスの迫力は劇場で是非体感してほしいと思います。
(参考)夏まゆみの"かなり本気モード"「female」編
作品の順番は次のとおりです。(敬称略)
「桃」
  原作:姫野カオルコ 監督:篠原哲雄 主演:長谷川京子
「太陽の見える場所までは」
  原作:室井佑月 監督:廣木隆一 主演:大塚ちひろ
「夜の舌先」
  原作:唯川恵 監督:松尾スズキ 主演:高岡早紀
「女神のかかと」
  原作:乃南アサ 監督:西川美和 主演:大塚寧々
「玉虫」
  原作:小池真理子 監督:塚本晋也 主演:石田えり
個性が強すぎる5作品が集まったため、順番を決めるのにプロデューサー達は相当悩んだそうです。複数回並びを変更した通しを観て侃々諤々やって、ようやくこれに決まったんだと、ミーティングに参加した当社社員が言っていました。
(ダンスシーンの挿入場所は、是非、映画を観て確認ください。)
次に各作品の感想を簡単に。
「桃」
桃が蘇らせる記憶。買ったばかりの真っ白なシューズの白さを、自分とそして自分が身に纏っている他のモノの汚れに対して申し訳なく思ってわざと汚してしまうような少女時代。それは彼女が最も自分であった時代。その事実を心の底に押しやろうとしてきた十数年。そんな過去をカットバックさせる桃を避けてきた主人公。
原作で最も印象に残っている文章がこれ。
 だからいやらしくならなければならない。いやらしいだけのおこないにしなければならない。でないと、壊れる。
少女の愛と性は、せつなく、いじらしく、崇高でさえあると感じます。
このテーマをショートムービーで表現するのは非常に難しかっただろうと思いました。実際に原作者の姫野さんは、制作発表の席で「すごく映像化しにくいものを書いて、監督や脚本の人を困らせてやろうと思いました。」と仰っています。この挑戦に対して、人間の深みを描き続けてきた篠原監督は、主役に長谷川京子さんを充て、彼女が桃に抱いている思いを過去と現在を行き来させながら表現し、彼女が桃をエロティクに食べさせるシーンに引っ張っていきます。彼女のこのシーンは、時間がゆっくりと流れていき、非常に官能的です。桃の果肉と果汁が放つ瑞々しさや色香、映像作品ならではの鮮烈な印象で目と耳に飛び込んできます。少女時代を演じる野村恵里さんの大胆で清々しい色気と、長谷川さんが桃を前に魅せる色気との対比が、エロティシズムに二重三重の深みを与えていると感じました。
「太陽の見える場所までは」
原作では男性2人に女性1人という設定を、廣木監督は女性3人にして、笑いとエロスの融合をテーマに表現されています。原作にも室井さんらしいお茶目な笑いの要素がいくつも散りばめられているのですが、ここをよりクローズアップさせながら、泪あり、笑いありエロスありのエンターテインメントにという、室井さんと廣木監督お二人の共通の狙いが映像に現れています。
個人的に室井さんの小説やブログのファンであり、彼女の作品のピンポイントで埋め込まれた地雷のような笑わせ方が好きなもんで、結果的にそういう細かい部分が多少大雑把に表現されてしまった点は残念ですが、映像としてのトータルバランスとしてはこのくらいのテンションで統一した方がよかったのだろうなとも思いました。
何より、タクシーという密室の中だけでストーリーが進んでいくのですが、主役の大塚ひひろさん、脇を固める石井苗子さん、片桐はいりさんの3名が演じる3人3様のバックグラウンドをフラッシュバックとか使わずに台詞回しとリアクションだけでスッと観客に伝えきってしまう表現力はさすがだと思います。
「夜の舌先」
公開前から主役の高岡早紀さんの官能的な演技が評判になっている作品です。原作は、ミステリー、ホラー、恋愛小説と幅広い筆を持たれる唯川さんですが、ご自身が、映像を意識して、いやらしくも、いじらしい女性を、初めてエロティックなシーンをふんだんに盛り込んで書いたと仰るように、小説自体もすごく綺麗ですごく淫らなのですが、これを松尾監督と高岡さんが極上のエロス(監督は「ス」がいらないと仰ってますが)に仕上げています。
不思議な香炉の力を借りて、夜な夜な年下の男性と淫靡な世界に浸りきる女性。地味で平凡な日中の姿と夜の大胆奔放さの対比が、イヤらしさをより増加させています。とにかく、高岡さんの一挙手一投足から目が離せない作品です。肢体の淫靡さもさることながら、視線の動かし方や独白の際に言葉の間から漏れる息使い、その全てが官能というベールに包まれています。演じきる高岡さんもここまでイヤらしく魅せる監督もさすがです。

「女神のかかと」

原作名は「僕が受験に成功したわけ」。乃南さんもジャンルを問わずに美しい物語を紡ぐ方ですが、これも非常に爽やかで美しい原作です。初めて性に芽生えていく少年の微妙な心理を優しいタッチで描き上げています。この美しい作品を映像としてさらに美しく表現された西川美和監督。原作集の中で個人的に最も好きな作品だったこともあり、また、唯一の女性監督ということで、観る前から非常に楽しみにしていたのですが、ため息が出て胸が痛くなる優しい作品に仕上がってます。乃南さんも西川監督も女性でありながら、なぜここまで思春期の少年の心の動きが描けるのか不思議です。
主演は大塚寧々さん。透き通るような美しさと触れてはいけない魅力を、西川監督のメガホンが完璧に見せつけてくれます。彼女の少ない抑揚で発せられるちょっとハスキーなあの声が、もの凄く効いてます。そして、大塚さんがその魅力で官能の世界に誘う少年の、微妙でデリケートな心理を演じる森田直幸くんがもの凄く上手いです。
原作の好みもありますが、映像の優しさも含めて、私が一番好きな作品です。
「玉虫」
トリを飾るにふさわしい作品。原作は小池真理子さん。小池さんは「言葉で五感を刺激しながら、ビジュアルになったときにそれがそのまま表現できる形になればいいなと思って書いた」と仰っていますが、まさにその要望を塚本監督が忠実に具現化されています。原作で描かれていた女性の哀愁が、緩急付けた描かれ方で表現されています。
主役の石田えりさんですが、何がすごいって、とにかく存在感が溢れています。切ないシーンも激しいシーンも楽しいシーンも、どの場面でも、力強さがスクリーンを超えて襲いかかってくるような感じです。それは、1400年経っても色あせない玉虫厨子に羽根を献上した玉虫と重なります。最後に彼女が向かうのは、自分の羽根で厨子を作る男のところなのか、それとも男の玉虫を集めて自分が厨子を作るのか。どちらにせよ、哀しい女性が強く生きていこうとすればするだけ溢れるもの悲しさを、解放された激しい官能がより深めているように感じます。全体的に重厚な本作が、female全体の重みを増す重要な役割を果たしていると感じました。

03.02追記 関連サイト
高野 雲のJAZZ的日常
シネマトピックス
小番頭日記
シネトレ
映画と(屑)ビデオの日々
映画の胃袋 Живот киноего

03.25追記 関連サイト
ロクな日々

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