上場会社監査事務所登録制度

   

会計士協会が、昨今の監査不祥事を受けて、「上場会社監査事務所登録制度」なるものを実施しようとしています。基本的には、監査の品質管理体制を強化する施策として既に実施している、品質管理レビュー制度に組み入れる形となるようです。
要綱案はこちら。
日本公認会計士協会:「上場会社監査事務所登録制度要綱案」の公開について
公開草案全文を読んでみましたが、個人的意見としては、あえて導入するだけの価値があるとは思えません。
目的・意義としては、

協会の自主規制の強化により取り組むべきものであるとの確信の下に、社会の目に見える具体的施策として上場会社監査事務所登録制度の導入を表明

と掲げられています。


登録制度の内容は、要約するとこんな感じです。

1.上場会社を監査する事務所に対して、上場監査事務所部会への登録申請を義務づけ、品質管理委員会が品質管理レビューに基づき審査し、違反があった場合は登録取消し等の制裁的措置を採る。
2.これに当たり、品質管理委員会は、これまでの品質管理レューの運用状況をモニタリングする組織から、登録申請の承認・不承認案及び登録取消し等の措置案を審議し決定する権限を有する組織とし、メンバー構成も若干変更する(弁護士1名追加、会計士3名追加)。
3.登録事務所は、これまでの大会社を監査している事務所としての品質管理レビューに基づく義務(品質管理レビューを受ける、協力する、改善措置に従う、報告書の提出、手続整備)に加え、品質管理のシステムに関する方針及び手続の概要等を協会に提出する義務を負う。

どうも、目に見える効果が発揮されるとは思えないです。このためにコスト2億円かけるというのはどうなんでしょうかね。せっせと合格率を上げて会計士を増やして会費収入を増やしてまかなうのでしょうか?質の向上と逆行してますね。
現実問題として、企業のビジネスリスク増加に伴い、監査においてもIT高度化や金融商品の開発、ビークルの活用などの新たな経済活動によって監査リスクが増大している事実と、これらに対する法的整備の遅延、それにも増して、上昇しない監査報酬と反比例してレビューのための資料作成に割かれる監査時間と現場の疲弊、その結果として経験未熟なJ1、J2(会計士補1年目、2年目という意味です)中心となる監査現場、といった点を抜本的に解決しなければ、ますます監査の質は低下していくと思うのですがね。実際、私が現場にいた頃と比較すると、特にインチャージは、どんどん現場での仕事が減って事務所での調書作成が増えてきていると感じます。こうした現実を無視して、このような書類重視の施策ばかり強化することは、訴訟リスク対策もしくは世間の非難回避にしか目が向いていないとしか思えないのですが。正直、私は、今の環境では、若い世代に公認会計士を目指してほしいと胸を張って言えませんね。

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