組織力

   

日本内部監査協会が発行している月刊誌「月刊監査研究」の2010年12月号に、とても面白い記事が掲載されていたので、抜粋しながらご紹介したいと思います。

第44回内部監査推進全国大会講演要旨
組織力 - 宿す、紡ぐ、磨く、繋ぐ/東京大学大学院経済学研究科教授 高橋伸夫

【経営の本質】
●おじさんたちは、何も仕事をしていないようなときでも、ただボーッとしているわけではない。若い人のことを見ている。ありとあらゆることを見ている。自分に大きな仕事が降ってきたとき、どんなメンバーでチームを組めば、その仕事をこなせるのか。その顔ぶれのアイデアさえ湧けば、私はどんな大きな仕事でも引き受けられる。だから、いつも若い人を見ている。

●「経営」の本質とは、一人一人ではできないような大きな仕事を皆でこなし、一人一人では突破できないような難関を皆で何とか切り抜けることであり、それが「組織力」と呼ばれる

●仕事もできな新入社員の頃から、たとえば、お花見の責任者だとか合コンの幹事だとか、はっきり言ってしまえば、どうでもいいような「仕事」を若い人にやらせてみるわけですね。そして、それを任された若い人は、そんな「仕事」をばかにしてはいけないわけです。なぜなら、「合コンの仕切り一つもまともにできない奴が、大きな仕事を仕切れるわけがない」からです。そこに「組織力」構築の最初の一歩があるわけです。

【組織力を宿す】
●人生は、勢いでしか決められない「重大な意思決定」と、熟慮に基づいた「つまらない意思決定」とで彩られている。

●組織には2つの機能がある。1つは、大きな問題をちっぽけな問題にブレイクダウンする機能。もうひとつは、集団で勢いをつける機能。

●高めの目標を掲げるのはナンセンスである。1~2年なら数字なんていくらでも作れてしまう。ただし、そんなことを何年も続けていたら、会社はだめになってしまう。共産圏の計画経済は、これで失敗した。

●客観指標の怖いところは、あまりにもインパクトが強いので、みんなそれをピンポイントで狙ってしまうことです。客観指標と直結する特定業務の成果を上げることばかりに気を取られ、そこだけをピンポイントで狙った行動を必ず誘発する。

●数字には全てが含まれる。流した涙の量、かいた汗の量、履き潰した靴の数、ありとあらゆる数字が入ってくる。楽して稼いだ二百万円と苦労して稼いだ百万円だったら、苦労して稼いだ百万円の方が価値があるんです。

●能率の原則は、事後的に正当化とか合理化するときに使われる手法である。

●正当的周辺参加(legitimate peripheral participation ; LPP)、つまり、学習とは、自分のアイデンティティを形成していく過程であり、自分が「何者かになっていく」という自分づくりである。優れた創業者によって大企業にまで成長した会社では、その創業者が亡くなってしまった後でも、その創業者のテイストが息づいている。重大すぎてとても意思決定できないというようなときに、諸々の合理的な思考の底に眠っていた、テイストが呼び覚まされる。

【組織力を紡ぐ】
●低コンテクストのコミュニケーションでは、情報の大半は明白に言葉の形にコード化されて、メッセージとして伝達される。高コンテクストのコミュニケーションでは、情報のほとんどが文脈の中に内在化される。明らかなのは、言葉数が少なく通じるのであれば、その方が、絶対に効率がいいということ。ただし、その状態に辿り着くまでには時間がかかる。

●一人の人間によって統率可能な規模には限界がある。一緒に働いた経験を持った経営幹部で構成されるマネジメント・チームによって組織が運営されるなら、その成長には限界がない。ただし、成長率には限界がある。共に働く時間が必要だから。これが投資である。

【組織力を繋ぐ】
●かつては、民間企業は、まっさらな状態で会社に来てくれと言った。変な色で染まっていると、かえって染めにくいから。だから何も勉強しないで会社に入った。それでも、15年、20年経つと、いっぱしのプロの仕事をしている。立派に会社を背負って立っている。

●「正社員で採ったって一人前になるかどうかわからない」と言われたら、「大丈夫!あなたくらいにはなりますから」と言うことにしている。社長にはなれない可能性大でしょうが、あなたぐらいにはなれる。あなたがどんな人間か全然知らないんだけれど、あなたがもし、自分の会社で必要欠くべからざる人材だとしたら、あなたの代わりは必ず一人は必要なんです。成長している会社だったら2人や3人は必要なんです。それを育てられるのは、今のあなたしかいない。だから是非、今のうちに正社員で雇って、あなたの代わりになる人を育ててくれないと、会社は続かない。

●若者に必要なのは、金でも客観評価でもない。我を忘れて夢中になれる仕事、成長している手ごたえ、達成感である。仕事の面白さに目覚めた人間だけが、本当の意味で一生懸命働く。

以上が要旨の要約ですが、どうでしょうか、とても面白い言葉が並んでると思いませんか。少なくとも私は読んで気分が高揚しました。こんな先生の授業は聞いてみたいなと思いました。なので、高橋先生の下記の著書も読んでみようと思っています。

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